◆風炉・濃茶・重茶碗

■ 重茶碗(かさねぢゃわん)は、連客の単位が多くなってきたことで、一碗では濃茶を練ることがむずかしい場合に、茶碗を2碗重ねて用いるようになったお点前です。
■ 幾人から重茶碗にするかは、客組や、茶碗の大きさによって異なりますが、5~6人までは一碗で練る方が風情があるとされています。ですから7~8人と言えますが、決まった約束はありません。
大きな茶碗ならば、一碗ということになります。また多人数の場合、三枚重ねにする場合もあります。
■ 重ねる茶碗に約束はなく、重ねた姿が良く、納まりがいいことを考慮します。
  楽茶碗を一個使うことで、古帛紗の使用を一枚で済ませるということもあります。


● この点前に棚を使用してもかまいません。


点前にかかる前の準備

 ・ 茶入れには客の人数分の茶を入れ、仕覆に入れ緒を結んでおく(一人、三杓、3.75g)
 ・ 茶碗は、上に深い茶碗を下に浅く大きめの茶碗を重ねる。
   正客はじめ前半の客に茶をすすめることになる主茶碗となる上の茶碗には、茶巾、茶筅、茶杓を仕組む。
 ・ 道具畳に水指を据え、前には、茶入を荘っておく。

◎ 菓子は点前の前に運び、客は先にいただく。


点前

1、茶道口に準備をした重茶碗を膝前に置いて坐り、襖を開け席に入り、水指前に進み坐る。

2、茶碗を両手で、勝手付に重ねたままで置き、茶入を少し右に寄せ、
重ねた茶碗の上だけを両手で取り上げ、左手で、茶入と置き合わせる。

3、勝手に戻り、柄杓、蓋置を仕組んだ建水を持ち出し、茶道口を閉め、定座に坐る。

4、左手で柄杓を取り、右手でかまえ(鏡柄杓)蓋置を右手で取り風炉敷板の左前角に置き、柄杓を扱って蓋置の上に引き、主客総礼をする。

5、建水を縁内に左手で進め、居ずまいを正す。

6、右手で水指前の茶碗を、左、右と膝前少し向こうに置く。

7、茶入を右手で取り、茶碗と膝の間に置き、仕覆の緒をとき脱がせ、茶入れを茶碗と膝前の間に置き、両手で仕覆の形をととのえ、右手で仕覆の右横を持ち、左へ打ち返して(底は上)、打留を客付きに向けて、右手で風炉と水指の中間向こう寄りに置く。(棚の場合は棚上の棗の前)

8、腰の帛紗を取り、草の四方捌きをし、左手で茶入を取り、蓋を向こう手前と二引きに拭き、帛紗を茶入の胴にあて、左手で左回しに回し拭き、定座に置く。

9、帛紗を捌き直し、茶杓を取り、三回拭き、茶入の蓋の摘みの左側(火付側)、に置き、茶筅を茶入の右に置き合わせる。

10、水指の蓋が塗蓋の場合、握りこんだ帛紗で手前を二引きで拭く。

11、茶碗を少し前に引き、茶巾を右手で取り、水指蓋上に置く。

12、柄杓を取ってかまえ、右手に帛紗を持ち替えて釜の蓋を取り、蓋置の上に置き、帛紗を建水の後に仮置きする。

13、柄杓を扱って湯を汲み、茶碗に入れ、柄杓を釜にあずけ、置き柄杓をする。

14、茶筅通しをする。

15、茶筅を元に戻し、茶碗を右左と持ち替え、湯を建水に捨て、右手で水指上の茶巾を取り、茶碗を拭き、膝前に置き、茶巾を釜の蓋上に置く。

16、茶杓を右手で取り、左手で茶入を横から持ち、茶杓を握り込んで茶入の蓋を取り、茶碗の右横に置き、茶杓を持ち替える。
もう一碗あるので、茶を一人分三杓と見当をつけてすくい入れ、茶杓を茶碗の右肩にあずけ、左手で茶入を元に戻し


17、茶杓で椀中の茶をさばき、茶碗の縁で茶杓を軽く打ち、茶を払い、茶入の蓋の上に置く。

18、その右手で水指の蓋を取り、右左右の三手に扱って、水指の左横に摘みが右横になるように置く。

19、柄杓を右手で上から取って、左手で扱って(取り柄杓)水を汲み、釜にさし(風炉の濃茶点前に限り、さきに水をさし湯加減をみる・さし水は初碗のみ)湯を汲み、茶碗に入れ、残った湯は釜に戻し、柄杓を釜にあずける。(切り柄杓)

20、茶筅を取り、左手を茶碗に添え、茶と湯をよく練り合わせ、茶筅を茶碗の左縁にあずけ、もう一度柄杓を取り、湯を汲み、

21、左手で茶筅を少し持ち上げ、その穂先から湯を茶碗にそそぎ、残った湯は再び釜に戻し、置き柄杓をする。

22、茶筅を取り、濃茶を練りあげて、茶筅を茶入の横に置き合わせる。

23、茶碗を右手で取り、左掌にのせ、正面を正し定座に出す。
(楽茶碗以外の場合は古帛紗を出す)
「何人様でお召し上がりください」 と亭主から初碗の量に応じて挨拶をする。

●  正客は茶碗が出されると取りに出て座に戻り、茶碗を右手で左膝横に置き、この茶碗で喫む何名かが総礼をする。正客は感謝して、いつものようにして、一口いただく。
●  次客以下も正客と同様にしていただく。


24、正客が一口喫むと、亭主は服加減をたずねる。(「お服加減はいかがですか?」)

25、中仕舞はせず、すぐに勝手付に仮置してある下重ねの茶碗を左手で取り、右手で膝前に置く。

26、湯を入れ、茶碗を清め、湯を捨て茶巾で茶碗を拭き、茶巾を釜の蓋にのせる。

27、茶杓をとり、左手で茶入を取って茶を三杓すくい入れ、茶杓を茶碗の右かたにあずけ、右手を茶入に添え、少し斜めにし時計逆回りに回して、中の茶を全てあけ切る。

28、茶入の口を右手の親指と人差指で向こう手前と拭き、指を懐紙で清め、茶入の蓋をして、左手で茶入を元の位置に戻し、茶杓で椀中の茶をさばき、茶碗の縁で茶杓を軽く打ち、茶を払い、茶入の蓋の上に置く。


29、柄杓を下から取って湯を汲み、茶碗に入れ、残った湯は釜に戻し、切り柄杓し、茶を練り合わせ、茶筅を茶碗の左縁にあずけ、もう一度柄杓を取り、湯を汲み、左手で茶筅を少し持ち上げ、その穂先から湯を茶碗にそそぎ、残った湯は再び釜に戻し、置き柄杓をする。

30、茶筅を取り、濃茶を練りあげて、茶筅を茶入の横に置き合わせ、茶碗を右手で取り、左掌にのせ、正面を正し定座に古帛紗を添え出す。


●  後半の上客は、茶碗を取りに出て座に戻り、茶碗を右手で左膝横に置き、後半の連客と総礼をする。客は感謝して、いつものようにして、一口いただく。

31、後の上客が一口喫むと、亭主は服加減をたずねる。(「お服加減はいかがですか?)

● 右手をついてこれを受けその後二口半喫む。

32、亭主は、取り柄杓をし、水を釜に一杓さし(中水)、引き柄杓で釜にあずけ、建水うしろの帛紗を腰につけ控える。


● 正客は次客の一口で、茶銘、詰、菓子などをたずねる。

33、亭主はこれに答え、「駿河の舞でございます」「竹茗堂でございます」
 「源太の栗羊羹でございます」 などと答える。


●  客方では、最初の正客が喫みました主茶碗は、次客三客を事例を改めしつつ順服して、初めの末客が喫みきると、「お茶碗の拝見を」 と請う。
●  末客はこれを受け、喫口を清めてから正客の前に持って出る。
●  正客は、次礼をして茶碗の拝見をする。
  詰が拝見を終わると、後の末客が正客との出会いで主茶碗を返し、正客は正面を正し、出された位置に返す。


34、亭主は、主茶碗の戻るのを待ち、茶碗が戻るとこれを取り込み、この茶碗で茶碗を喫んだ前半の客が総礼します。

35、
柄杓を下からとって湯を汲み、茶碗に入れ、置き柄杓をする。

36、茶碗をすすいで建水に湯を捨て、茶碗を右手で膝前に置き、お仕舞いの挨拶をする。
「お仕舞いいたします」


37、取り柄杓で水を汲み茶碗に入れ、引き柄杓をし、釜にあずける。

38、しまいの茶筅通しをし、茶筅を元の位置に戻し、右手で茶碗を取り、左手に持ち替えて水を建水に捨てる。

39、茶巾を右手で取り、茶碗に入れ、右手で膝前に置き、茶筅を入れる。

40、その右手で茶杓を取り、(建水はそのまま)左手で腰の帛紗を取り、茶杓を握り込んで帛紗を捌く。


41、茶杓を拭いて、茶碗にふせて置き、茶入を水指の前右よりに置きかえる。

42、茶碗を右、左、右手前の三手で茶入と置き合わせ、本仕舞いをする。

●  二碗目を順次詰まで喫み回しし、詰が喫みきると、正客が「お茶碗の拝見を」 と請う。
●  詰はこれを受け、喫口を清めてから正客の前に持って出る。
●  正客以下連客がは、茶碗の拝見をする。
  末客が拝見を終わると、正客との出会いで、正客に返し、正客は正面を正し、出された位置に返す。

43、亭主は、茶碗が戻ると古帛紗、茶碗の順に取り込み、後半この茶碗で喫んだ客と総礼する。

44、柄杓を下からとって湯を汲み、茶碗に入れ、置き柄杓をし、すすいで建水に捨て、茶碗をこのまま左手で建水上座に置き、その手で建水を引く。

45、、柄杓を上からとって水指から水を汲み、釜に一杓入れる。
(棚がある場合は、湯返しする。

46、柄杓をかまえ、釜の蓋を閉め、柄杓をひく。

47、水指の蓋を右、左、右の三手で閉める。

■  この時、正客より「茶入、茶杓、仕覆、拝見」 があればこれを受ける。

48、柄杓を右手で取り、左手に持ち替えて、建水にたたみ、右手で蓋置きを取り、左手に持たせ、建水のうしろに置く。

49、主茶碗を右手で取って、左手を添え、勝手に仮置きした茶碗の上に両手で初めのように重ねる。

50、
茶入を右手で取り、左掌にのせ客付きに回り(炉縁の中心)茶入れを膝前に置き、帛紗を捌いて、茶入れを取り、蓋を向こう手前と拭き、帛紗を茶入の胴で拡げ、胴拭きをし拭き抜き、帛紗を膝前に置く。

51、蓋を取り、蓋裏を調べ、蓋を帛紗の向こうに置き、帛紗を取り胴で扱い、茶入の口を向こう手前と拭く。

52、帛紗を膝前に置き、その手で茶入れの蓋を取り閉める。

53、左掌にのせ正面を正し、右手で定座に出す。

54、帛紗を腰につけ、居前に戻り、茶杓を右手で取り、左手に渡し、客付きに回り、茶入れの右に置く。

55、ふたたび居前に戻り、仕覆を右手で取り、左手で扱い、左掌にのせ、客付きに回り、茶杓の右のほうへ置き合わせ、拝見に出す。

56、居前に戻り、天板の棗を右向こうに置きかえ、
左手で柄杓を取り右に持ち替えて合を伏せ斜めに天板に荘る。


57、蓋置を右手で取って左手で扱い、右手で柄杓の左手前に荘る。

58、建水、茶碗の順に下げ、

59、水次を持って(左手で持ち手をつかみ、蓋上に茶巾、右手は注ぎ口下に添える)棚正面に座り、水次を手なりに左膝脇に置き、水指の蓋を右左と二手で開け水を注ぎ、水指の蓋を閉め、水次を持って下がり座り、膝前に置いて襖を閉める。

●  正客は、亭主が建水を持ってさがると、拝見物を引き、まず、茶入を右膝横に置き、茶杓をその右横に置き、仕覆を右手で打ちかえして、茶杓の右横に置いて、茶道口の閉まるのを待つ。

●  正客は亭主が水屋にさがると次礼をし、茶入、茶杓、仕覆の順に拝見をする。
次客は三客に次礼して正客につづき拝見する。

  
末客は、茶入、茶杓、仕覆の拝見がすむと、仕覆を右手で打ちかえし、茶杓の左に置き、正客との出会いで返す。(緒の向きは必ず道具側に返す)
   正客はいったんあらためて、茶入、茶杓、仕覆の順で出された反対に返す。

拝見物が返ると、取りに出る。

60、亭主は茶道口に坐り、襖を開け道具正面に進み、坐り、正客の問いに
「お茶入のお形は」   「肩衝きでございます」
 「お作、窯は」     「瀬戸でございます」
 「お茶杓のお作は」   「宗篤でございます」
 「ご銘は」       「薫風でございます」
 「お仕覆のお生地は」  「角龍金襴でございます」などに答え、

61、一礼して、すぐに右手で仕覆を取り左掌にのせ、またすぐに右手で茶杓を取り、仕覆の上に斜めにのせ左親指でおさえ、茶入を右手で持って立ち、茶道口に持ち帰る。

62、坐って、茶入を膝近くに置き、茶杓を茶入の左に置き、仕覆を右手で打ちかえして茶杓の左に置き(打留が茶杓側ということ)一礼をし、襖を閉める。




◆お稽古の手引き◆
 

●客の心得●
●割り稽古●




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