炉・薄茶・貴人点
■貴人点について■
 「貴人点」は、高貴の方に対しての作法で、往昔は最も多く行われた点前。
 (篤姫が井伊直弼に振舞われてました)
 一概にはいえませんが、古い美術的に価値の高いものよりも清浄なものをよいとします。
 菓子器はすべて、足の高い
高杯(たかつき)が約束で、白紙を折ってのせその上に菓子を盛ります。
   貴人に対して一人一碗が約束で、菓子器の高杯も一人づつとします。
 小習い十六ヶ条第一ヶ条。

■貴人とは■
 貴人とは、官位の高い人のことをいいます。
 日本でも戦前までは宮中を中心にして官位が定まっていました。明治憲法施行までは、一位から八位まであり、それに正、従があって十六階の階級がありました。
 新憲法にも位階令があるのですが、華族の廃止によって、新たな叙位は追賜や昇叙だけになっているそうです。
 現在、茶の湯では貴人と尊称するお方は皇族の方々の他には、世の中のために功績があって勲位を授与された方達のことをいいます。そうした身分の高い方にお茶を差し上げる時の点前を【貴人点】といいます。
■貴人畳■
 貴人がお座り頂く畳を呼び、神聖な場と認識します。

点前にかかる前の準備

・ 薄茶器に中高になるようにお茶を入れる。
・ 茶筅は、水で清める。
・ 天目茶碗を貴人台に載せ、茶巾、茶筅、茶杓を仕組む。
・ 水指に八分目の水を入れる。
・ 炉用の竹の蓋置を使用(節を中ほどに切った中節)
・ 柄杓を準備。(柄のつき方は月形。合が大ぶりで皮のほうを斜めに切ってある)
・ 棚を貴人畳のへりから畳の目数十六目向こう、中央に揃える。
・ 地板に水指、天板に棗を飾る。
・ 水次を用意し、茶巾を蓋上にのせておく。
            ・ 釜の蓋をきっておく。

            ・ 帛紗を腰につける

● 菓子は高杯に干菓子を盛り、お席入りと同時に持ち出す。


点前

■茶碗を運び出す■

1、茶碗を載せた貴人台を建付けに置き、襖を開け、両手を揃えて一礼する。(真)

2、右手左手と貴人台をの縁(絵矢印部分)に手をかけて取り上げてから、右手の手をホウズキと茶碗に添えて持って運び出す。右膝から立ち上がり、畳の中央を進み、棚の正面に坐る。

3、
右手を台縁右方に持ち替えて、左手を少し手前にひかえて、勝手付左方に両手で仮置きする。

4、次に天板の棗を右手で下ろし、棚前正面、右寄りに置く。

5、仮置きの貴人台を右手横、左手前と取り上げ、左手横、右手前と持ち替えて、棗と置き合わせる。

6、左膝から立ち上がり、水屋にさがる。

7、建水を左手に持って席入りし、襖を閉め、居前(炉の左隅を中心として斜め)に坐り、手なりに建水を置く。

8、左手で柄杓をとり、切り止めに右手を添え、構え(鏡柄杓)右手で建水の中の蓋置を取り、柄杓の内側を通り、畳の縁より3目ずつのところに置く。

9、柄杓を蓋置きに斜めに引く。畳と平行にしたところで柄杓の柄を離す。
○ 半東は、このあたりで茶道口を開け、一礼してにじり入って、踏込畳に斜めに座って両手をついて控える。

10、左手で建水を膝前の線(炉縁の線上)まであげて、居ずまいを正し、

11、貴人台を右手前、左手横と持って取り上げ、右手を横にして膝前少し向こうに移動させる

12、棗を半月に取り、茶碗と膝の間に置く。

13、左手で腰の帛紗を取り、
(さば)く。そのまま帛紗を握り込み、左手で棗を取り、清める。

14、そのまま帛紗を握り込み、棗を左手で上から持って棚の手前右角に置く。

15、帛紗を捌き直して左手に持ち、右手で茶杓を取り、清め、棗の上に置く。(かい先は上)

16、右手で茶筅を取り、棗の右側に置き合わせる。

17、帛紗を左手の人差し指と中指の間にはさんだまま、柄杓を右手で取りかまえ、右手で帛紗を取り、釜の蓋にのせ、開け、露をきる。

18、蓋を炉縁の角を避けながら、蓋置に置き、帛紗を左膝前に仮置きし、蓋の上に茶巾をのせる。

19、柄杓を持ち直し、湯を汲み、茶碗より合一つ分上に持ってきて、湯を茶碗に入れる。柄杓を釜にあずけ、

20、右手で茶筅を取り、左手を軽く茶碗に添えて茶碗を右手で一度打つ。

21、右手左手と両手で台縁を持って手前に寄せ、

22、左手を茶碗に添え、茶筅通しを二度上げ三度打ちして、穂先を清める。茶筅を元の位置に戻す。


23、茶碗を右手で取り、左手も添えて取り上げ、左手片手で建水に湯を捨てる。

24、茶巾を右手で取り、茶碗を大きく三回半拭き清める。

25、茶碗に茶巾を入れ、左手を添えたまま茶碗を台にの、茶巾を釜の蓋の上に置く。

■茶を点てる■
26、右手で茶杓を取り、左手を畳に軽くおき、頭を下げ「お菓子をどうぞ」とすすめる。

27、棗を左手で上から取って、右手で右横を持つ。棗を手のひらにのせ、茶碗の左上で蓋を取り、右ひざ前に置く。

28、茶を二杓ほどすくい茶碗に入れ、茶杓を持ち替えて茶碗の縁で静かに打って茶を払う。

29、棗の蓋をし、右手で扱って左手で置き、茶杓を棗の上に戻す。

30、右手で水指の蓋の摘みを取り、左手で横に持ち替え二手で、水指の左側に置く。

31、柄杓を持ち、湯を汲み、茶碗に入れる。残りを釜に返し、静かに柄杓を釜にあずける。

32、その手で茶筅を取り、茶を点てる。茶筅は元の位置に戻す。
 
33、貴人台を右手左手と持ち、取り上げて客付に回り、台縁を右向こう左手前と上で回して定座に出す。左膝右膝と一膝退いて両手を畳につけ控える。

○ 半東は、このお茶を取りに出て、貴人にさしあげる。
(右向こう左手前と台を下で回して一膝退き一礼し、元の座に戻って控える)

●貴人の喫み方は法なしといいますが、お稽古の場合は、お茶が出されると、まず取り次がれた貴人台を両手に取り上げ、縁内次客の間に取り込み、、次客に「お先に」と次礼し、正面に置き、「お点前ちょうだいします」(真)と挨拶し、貴人台を右膝頭に置いて茶碗を取り上げ、左手にのせ感謝の気持ちでおしいただき、正面をさけ時計回りに回しいただく。

34、亭主はこれを受ける。(行のおじぎ)

35、客の一口で亭主は帛紗を右手で取り、左手に打ちかえして腰につける。

● 客は茶を喫み、最後に吸い切りをして、喫み口を指先で清め、その指先を懐紙で清める。茶碗の正面をただし、縁外に置き、拝見をする。茶碗を左掌にのせ、正面を正し(反対に回す)、出された位置に返す。

● 次客へ茶が出されたら、まず、縁内、右膝横に置き、「お相伴いたします」と挨拶し、その後、左膝横「お先に」、膝前真中「お点前頂戴いたします」と挨拶し、茶碗を取り、感謝の気持ちで押し頂き、正面をさけ回しいただき、茶碗を清め、指先清め、拝見し、返す。

○ 半東は、茶碗拝見が終わるとこれを亭主に戻す。

36、貴人台が返ると、右左と一膝進んで貴人台を取り上げ、左手横縁に直して両手で持ち、居前に回り下に置く。

37、湯を汲み、茶碗に入れ、柄杓を戻す。

38、左手で茶碗を取り、湯を建水にあけ、正客から、ここで「おしまいください」の挨拶があればこれを受ける。

39、茶碗を右手で下に置き、あらためて「おしまいさせていただきます」と、しまいの挨拶をする。

■しまいつけをする■

40、右手で柄杓を取り、水指から水を汲み、茶碗に入れ、しまいの茶筅通しをする。

41、茶筅を茶碗の横に置き、

42、建水に水を捨て、右手で茶巾を取って、茶碗に入れる。

43、茶筅をとじ目を上にして茶碗に入れ、

44、右手で茶杓を取り、持ったまま左手で建水を下げる。

45、帛紗を捌き、 茶杓を清め、茶碗にふせて置く。

46、帛紗の茶粉を建水の上で払い、腰につける。

47、棗を右手で、棚の右寄りに置き合わせる。

48、貴人台を右左と両手で取り上げ、右手を少し控えて、棗の左側に置き合わす。

49、釜から柄杓をとり、水指から水を汲み、釜に水を一杓さす。

50、そのまま柄杓を釜に入れ、湯をたっぷり汲み、湯返しをする。

51、柄杓を構え、釜の蓋を閉め、柄杓を引く。

52、水指の蓋を左手に取り、右手に持ち替え二手で閉め、正客から「お棗、お茶杓拝見を」の拝見の挨拶があれば、受ける。

 53、柄杓を右手で取り、天板に荘る。(合をふせ、斜めにする)

 54、蓋置きを右手で取り、左手にのせ、棚の正面に向く。

 55、蓋置を右手に持ち替えて、天板に荘り(柄杓の合の左下)

 56、貴人台を右横左手前で、勝手付に割りつける。

57、棗を取り、左手にのせ、客付きに回る。

58、棗を膝前に置き、帛紗を捌いて清める。

59、帛紗を握りこんで蓋を取り、蓋裏をしらべ、蓋を膝前に置き、棗の口を向こう、手前と帛紗で清める。

60、帛紗を握りこみ、蓋を閉め、帛紗を膝前に置き、棗の正面を正し右手で左側に出す。

61、
帛紗は腰につけずに、そのまま右手で取って左手にのせたままで、


62、水指正面に回り、左掌の帛紗の上に茶杓をのせて、居前に回り、右手で棗の右に置く。


■水指に水をつぐ■

63、建水を持ち、左足を立て、立ち上がり、敷合わせで左足でこえてさがる。

○ 半東は建水を持って立った時、棗、茶杓を自分の前に出された順序に取り込み、正客に拝見に取り次ぎ、控えている。

64、右手左手と貴人台の縁に手をかけて取り上げて、右手の手をホウズキと茶碗に添えて持って、さがる。

65、水次を持って入り、棚前左に手なりに置く。

66、水指の蓋を右手で取り、左手で扱って、水指の左横に立てかける。

67、茶巾を水次の口にあて持ち上げ水指に水をつぐ。(丸卓の場合は棚にのせたままでつぐ)

68、茶巾を水次の蓋上に戻し、水指の蓋を扱って閉める。

69、水次を正面から持って下がり、襖を閉め、拝見の返るのを水屋で待つ。


● 正客は棗、茶杓と縁内に取り込み、亭主が水屋に入ってから次礼して、棗、茶杓の順に縁内で拝見をし、終わると、帛紗を茶杓から離し、出された反対に返す。 

○ 半東は、拝見が終わると、これを亭主に戻す。 

■あいさつに答える■


70、亭主は拝見物を取りに定座に座り、正客からの拝見物の問いに答える。
 「棗のお形は?」「お塗りは?」「茶杓のお作は?」「ご名は?」
 の問いに
 「棗は中村そうてつで、ございます。」
 「杓は寛道でございます。」「寿山でございます」 などと答えて、
 「いずれもありがとうございました」 と、挨拶する。

71、まず、帛紗を腰につけ、右手で棗を取り、左手にのせ、右手で茶杓を持つ。

72、立ち上がり、拝見物を持ってさがり、茶道口に坐り、建付に拝見物を置き、一礼して襖を閉める。


◆お稽古の手引き◆ 

●客の心得●

●割り稽古●




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